著者:渡辺満枝
日頃日常生活の中で感じたサービスの事や、マナー、相手のちょっとした気づきで嬉しかったことなどコラムにしました。
ゴールデンウィークが終わって数週間。町はいつものようにスーツ姿のビジネスマンが忙しそうです。長いこと安、近、短と言われたレジャートレンドも、今年は長期休暇をとる人が増えたとか。景気の回復が本格化しているのかもしれません。
この間、企業や政治家の不祥事が世情を賑わしました。
特に政治家の年金未払い、このニュースが報道されない日はありません。
年金問題は国民にとって最大の関心事であり、それだけに厳しい目を向けているのですが、あれだけ大勢の政治家が未払いという姿を見るにつけ、怒りや驚きを通り越し、ただただ呆れるばかりです。
この国の政治家には為政者としての資格はない、そんな無力感にも苛まれます。
何より国民を落胆させたのが後処理でしょう。
未払いの理由は皆、一様に秘書や事務所に任せたため自己責任を回避します。
イラクで人質になった若者に対して浴びせられた「自己責任」は、同じ政治家の口から出た言葉ではなかったか。
これでは国民が納得するどころか、なお怒りを膨らませるばかりです。前回も述べましたように、クレーム処理としては一番稚拙かつ最悪のパターンと言えるでしょう。
最悪を絵に描いたような振る舞いが、前民主党代表のお詫び行脚でした。
あれほど強い調子で自民党の未払い議員を攻め立てたのに、自分のこととなるとトーンダウンして覇気のない声、もごもごした話し方で弁解ばかりが先に立ち、自分の非は認めない。
その姿勢からは説得力が微塵も感じられません。
たった一人の印象が組織そのものの印象を大きく左右します。
今夏の参院選に響くのは必至でしょう。それほどまでに党の顔、組織を代表して聴衆に訴える人の話し方と内容は、重要な意味を持つのです。
以前、複数の自動車会社が新車の合同発表会をしたことがありました。
最初にA社の営業マンが壇上に立ち、
実に堂々たる説明で、聞いていた顧客は感心し、大きな拍手が起こったとか。
次にB社の営業マンが話します。
A社との比較を的確に説明したことで、顧客は更に感心し、A社にも増して大きな拍手だったとか。
最後にC社の営業マンが出てきました。聞いてみましょう。
さて、子供の頃、遠足へ行ったときのことです。
友人達のおにぎりは丸や俵型などバラエティに富んだ形でしたが、私のそれは必ず三角形をしていました。時には形の違うおにぎりも食べてみたいと思いましたが、大人になって分かりました。
手と手を合わせてご飯を握ると、自然に三角形になるのです。
つまり、三角形は自然な形なのです。
その話し方は訥々として、お世辞にも上手とは言えませんが、顧客は大いに感動し、しばらく拍手が鳴り止まなかったそうです。
次のようなことが言えるでしょう。
A社の営業マンは顧客に対して「説明」をした。B社の営業マンはA社との比較で「説得」をした。そしてC社の営業マンは顧客に「納得」させたのです。
人の心を動かすには、人の心でしかできません。
説明や説得では駄目なのです。立て板に水でとうとうと話す。
これはこれで大切な技術と言えますが、たどたどしくても心を込めれば、人の琴線に触れるもの。
熱く語ることの本意は、どこかの国の首相のように絶叫すれば良いというものではありません。
自分の扱う物やサービスに心底惚れ込み、自信を持つこと。そして、熱い思い入れが相手の心を動かします。
先述の未納党首が、仮にこう語っていたらどうだったでしょう。
「誠に申し訳ございません。事務所に任せていたとはいえ、私の管理不行き届きです。
二度とこのようなことがないよう、また、国民の皆様の信頼を回復すべく政治生命を賭して努力致しますので、是非、ご支援のほどよろしくお願い致します」
簡潔に、熱く、パワフルに、心をもって語ったなら、国民の印象はぐっと変わったに違いありません。
捨ててこそ浮かぶ瀬もある、と言うように、言葉には覚悟が必要です。
覚悟は心のありようです、といったことを、垣間見せた寸劇でした。
さて、説得力は話す行為ですが、人がコミュニケーションをとるときに一方通行はあり得ません。
話す、聴くは一対の行為で、「聞く」ではなく「聴く」なのです。
聞くは何となく聞こえてくることで、聴くは「耳」と「心」と「目」で、一生懸命
に傾聴すること。その態度が漢字の部位に込められています。そこで聴き方のポイントを考えてみましょう。
以上を踏まえ、積極的な傾聴を心掛けると、より良い人間関係が築けます。ひいては贔屓客を増やすことにも繋がるのです。
「月刊ゴルフ用品界2004年6月号」((株)ゴルフ用品界社発行)より